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血統主義と出生地主義の違い

血統主義と出生地主義の違い

 平成29年の3月、代表の青田は入管事務の勉強と休暇を兼ねてグアムに行って参りました。勉強といっても現地の日本人とコンタクトをとり、アメリカ※で生活する上での国籍上の注意点やテクニック(裏技?)を教えて貰うことがメインです。今回の旅行では、かつて行政書士試験の勉強をしていた時にはいまいちイメージできなかったことがよく理解できるようになりました。そのなかのひとつ、「血統主義」と「出生地主義」の違いについてお話ししたいと思います。

※グアムは「準州」といいまして、「州」より1ランク下の扱いとなりますが、れっきとしたアメリカ合衆国の領土です。他に北マリアナ諸島(サイパン)やプエルトリコも準州です。

日本は血統主義

 例えば、たまたま日本に滞在していた外国人の妊婦さんが、滞在中に産気づいて日本で出産したとします。この場合、生まれてきた赤ちゃんの国籍はどこになるでしょうか。恐らく、私たち日本人の感覚だと「たまたま生まれてきたのが日本だっただけで、親は外国人なんだから親の国籍をそのまま受け継ぐんでないの?」となると思います。

 このように、国籍取得において、親のどちらかの国籍が子の国籍となる方式を「血統主義」と言います。父系を優先したり、条件付きで出生地主義を織り交ぜる国はあるものの、こちらが国際的には主流派です。その中でも、父系の血統を優先するのは中東諸国に多く、条件付きで出生地主義と併用しているのはイギリス、ドイツ、フランスなど西ヨーロッパ諸国に多く見られます。

アメリカは出生地主義

 それに対して、出生した国の国籍が子の国籍となる方式を「出生地主義」と言います。前述の例えにおいて、もし日本がこの方式を採用しているとしたら、親がどこの国籍であろうと、赤ちゃんには日本国籍が付与され、法律上は日本人となるのです。そんなのアリなの?とお思いの方もいらっしゃると思いますが、この方式を採用している国を挙げてみると、ある「共通点」が見えてきます。

出生地主義を採用している国…アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、エクアドルetc.

 これらの国々、よく考えてみたら南北アメリカ大陸、つまり「新大陸」の国々ですよね?

 元々ヨーロッパでもアジアでも個人は家族や民族に属するもの、という考えが主流だったのですが、南北アメリカ大陸の旧植民地が独立する際、人口を増加させたいなら国内で生まれた新生児に自国の国籍を付与するのが手っ取り早い、ということから出生地主義の考えが浸透していったようです。血統主義の考えが浸透している我々にはなかなか理解しがたいかもしれませんが、多数の移民を受け入れざるを得ない新興国においては死活問題だったのでしょうね。血統主義にこだわってしまえば人は増えても法律上自国民ではない人=外国人又は無国籍者の割合が増えてしまいます。それでは新興国の政府にしてみれば誠に都合が悪いわけです。国民が増えなければ国力が伸びて経済が発展しても税収が少なくなり、代わりに自国の富が海外に流出してしまいます。それでは遅かれ早かれ国は滅びます。

血統主義+出生地主義=二重国籍?!

 勘の鋭い方はもうお気づきでしょう。もし、日本人の妊婦さんがアメリカ滞在中に出産したとしたらどうなりますか?

 そうです、生まれてきた赤ちゃんには無条件でアメリカ市民権が付与されます。たったこれだけのことで、生まれた瞬間から法律上のアメリカ国民です。ですが、血統主義の日本の国民である以上、同時に日本国籍も取得することになりますが、これがいわゆる「(二)重国籍」の状態です。この赤ちゃんのように20歳に達する前に二重国籍となった場合、日本の国籍法では22歳に達する前にいずれかの国籍を選択する必要があります。⇒詳しくはこちら

※ここに、この制度のグレーゾーンともいうべきポイントがあるのですが、ここでは割愛します。

現地で生活している日本人ご夫婦の皆さんにとって、我が子へのこの待遇は後に計り知れない恩恵となって返ってくるのです。何故か?

アメリカでのビジネスに、アメリカ市民権取得は必須アイテムだからです。

「移民の国」は外国人に冷たい?

 以下、私が利用したダイビングショップの日本人スタッフの方からお聞きした話です。グアムに限らず、アメリカではアメリカ国籍を持たない個人がアメリカの土地を購入することができません。そのため、アメリカ人との共同経営とし、土地はアメリカ人が所有し、その上に自分名義の建物を建てることになるのですが、ほとんどの場合、後で揉めるそうなんです。アメリカ人が土地の所有権を盾に土地の賃借料を増額する程度ならまだいい方で、建物の撤去を求められ結局何も残らなかった、なんてことは大して珍しいことでもなく、挙句の果てには弁護士を雇って法廷闘争に持ち込もうとしたら実はその弁護士もグルだった、なんて修羅場もあるそうです。

 このように、ビジネスの世界においては自国民を最優先し、移民はともかく外国人にはハンデを設けるのがアメリカ式です。ですから、現地で会社を興した日本人のオーナーの皆さんは軒並みアメリカ市民権を取得しています。事実、このダイビングショップも、ディナーで訪れたステーキショップも、あの横井庄一さんが潜伏していた場所の近くにある実弾射撃場も、オーナーさんは日本人ですが、いずれも市民権を取得済みとのことでした。

アメリカ永住権を取得する方法は?

グリーンカード(アメリカ永住権証明書)
※USCISwebサイトより

 では、どうすればアメリカ市民権が取れるのでしょうか?このあたりはアメリカも日本も基本的には同じで、まずは永住権(日本でいうところの永住許可)を取得するところから始まります。その方法は、大きく分けて5つあります。

 

1.家族絡み 2.雇用・投資絡み 3.抽選 4.亡命 5.難民

 このうち、4.と5.は日本人である以上あり得ませんので、実際は3つです。1.は米国市民の家族(親・兄弟・子・配偶者・寡婦等)、2.は米国の企業に就職して雇用主にスポンサーになってもらうか、100万US$を投資するか、です。そのうち、「卓越技能労働者」や「米国に貢献し得る知的労働者」はスポンサーは必要ありません。前者はノーベル賞受賞者や国際的なスポーツ選手、後者は学術研究者のことです。

 そして3.は、文字通りコンピューターによる「抽選」です。そんなのアリなの?!とお思いでしょうが、大アリなんです。過去5年間で5万人を超える移住者を輩出している国以外の外国人は、インターネット経由の電子申請で毎年行われる抽選に応募(?!)できるのです。ちなみに、過去3年間の日本人当選者数はDV(抽選アメリカ永住権プログラム)-2015で636人、2016で302人、2017で204人とのことです。

 ということで、一般庶民にとっては、事実上米国人と結婚するか、米国の会社に雇ってもらうか、くじに当たるか、の3つしかないわけです。そうやって狭き門を潜り抜けて、さらに諸条件をクリアして初めてアメリカ市民権の申請ができるようになるのです。

※「アメリカ市民権」とは、厳密にいえば「アメリカ国籍」とは異なる概念なのですが、ここでは同義と捉えていただいて結構です。また、「米国市民」も「アメリカ国籍保持者」とここでは同義として扱っています。

参考:米国市民権・移民業務局(United States Citizenship and Immigtation Service)webサイト

⇒詳しくはこちら(英語・スペイン語のみ)

アメリカでの出産はまさに「切り札」

 いかがでしょう?ここまでご覧になって、正直お腹いっぱいになりませんか?書いている私のほうが食傷気味ですもの。

 ではお待たせしました。このトピックスでの本題に移ります。

アメリカで就労ビザを取得して生活している日本人ご夫婦に赤ちゃんができたら、彼らの将来・家族全体の幸福にとってどこで出産するのがベストか、は火を見るより明らかなのです。

 前述のダイビングショップの日本人スタッフさんは、ご実家で出産するつもりだった奥様に、「頼むからグアムで産んでくれ!!」と、それこそ土下座する勢いでお願いしたそうです。その結果、産まれた赤ちゃんはオギャーと産声を上げた時点で、永住権をすっ飛ばして晴れてアメリカ市民権を取得しました。その結果、将来お父さん(スタッフさん)が独立するとき、名義上お子さんをオーナーとして法人設立ができますよね?そうなれば、土地の購入が可能となり、後で身包み剥がされるような目に遭わずに済むことになります。しかも、お子さんは当然として、奥様も「アメリカ人の母親」ということで、万が一このあと離婚したとしても、アメリカ政府から死ぬまで年金が支給されるとか(ちなみに、お父さんにはそういう特典はないそうです)。

 旦那さんが土下座するまでもなく、私が奥様の立場だったら、そこまでメリットがあるなら日本から両親を呼んで暫く滞在させてでもグアムで産みますわな、と思った次第です。さらに、我が子のアメリカ市民権取得を目的とした、妊婦さん向けのグアム出産ツアーなるものまであるそうです。それに参加した中国人はそんなときでも「爆買い」だったそうですが…。

 今回の旅行の成果はこんなところです。次回はアメリカ以外の入管事情についてお話したいと思います。

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